今、読書大会中の平安ですが、本の読み方にはおよそ二通りが考えられます。
その第一は、早くさっと読んでいく方法です。ひとつひとつの語句の詮索や吟味をやめ、だいたいのアウトラインがつかめればそれでいいという態度でさっと読みとばす。次々にページをめくりながら、その要点だけを頭に入れていくというやり方です。アメリカの故ケネディ大統領は、人の三倍のスピードで本を読んだそうです。吉田松陰は「およそ万巻の書を読むのでなかったら、将来有為な人物になることはできない」と言っています。記録によれば、松陰の読書はあらゆる分野にわたり、しかも驚くべき読書量だそうです。おそらく、この速読という方法によって本を読んでいったのでしょう。この読書法を手に入れて、「万巻の書」を読破してもらいたいですね。そして視野を広くし、高い見識をもってもらいたいと思います。
第二の読書法は、第一の場合とちがって、一行一行を心をこめてゆっくり読むという方法です。一行読んでは考え、さらに一行読んではそれを心の中でかみしめるという方法です。そして、行間にひそんでいる真理の声に耳をかたむけるのです。人はしばしば一行の文によって目が覚め、一つのことばによって心が洗われるものです。私たちは、一行読むごとに心を深くし、ページをめくるのが惜しいような、そんな書物を何冊か座右に備えておきたいものです。それらの本は、必ずや私たちの心を豊かにし、この世に生きる意義について何らかの啓示を与えてくれることでしょう。
幸い本校にはすばらしい図書館があります。高校生活において、その蔵書のすべてを読破するぐらいの意気ごみで本を読んでもらいたい。また、その中からくり返し読むに価する生涯の書をぜひ見つけてもらいたいですね。視野の広い、そして心豊かな龍谷平安生の誕生を期して……。