みなさん、おはようございます。
後期始業式で、本年4月に発行いたしました冊子「平安の願い“三つの大切”」については、今日の仏参で話しますと言いました。今一度、『建学の精神』を確認しておきます。
龍谷大平安の『建学の精神』は「浄土真宗の精神」です。では、「浄土真宗の精神」とは、生きとし生けるもの全てを、迷いから悟りへと転換させたいという阿弥陀仏の誓願に他なりません。何度聞いても難しいですね。では、具体的にどういう心を持ち、どういう生き方をするのかという日常の心得として、「ことばを大切に」「じかんを大切に」「いのちを大切に」という“三つの大切”を掲げているのです。
「ことば」は「南無阿弥陀仏」とお名号を称えることによって、阿弥陀さまから「必ず救い取るぞ」と呼び掛けられ、誰もが仏さまに願われた存在であることに気付かされること、他人への思いやりの形が言葉で表れます。
「じかん」は「諸行無常」という言葉があるように、ものごとは時々刻々と移りゆき、必ず過ぎてしまうものです。生きている今を大切にしてほしいという思いを込めています。
「いのち」は、阿弥陀さまからの預かりものです。阿弥陀さまの願いのかけられた尊い「いのち」と思えた時、仏さまを悲しませない生き方をしようと考えるようになるのです。だからこそ大切にしてほしいということです。これが龍谷大平安の願いです。
それでは、前期の始業式と前期初めの仏参で、「平安の願い“三つの大切”」から「ことばを大切に」と「じかんを大切に」の内容を紹介しましたので、いよいよ“三つの大切”の「いのちを大切に」について、
紹介いたします。
中学生に向けた文章で、次のように記しております。
しゃぼん玉飛んだ 屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで こわれて消えた
しゃぼん玉消えた 飛ばずに消えた
生まれてすぐに こわれて消えた
風風吹くな しゃぼん玉飛ばそ
誰もが一度は口ずさんだことのある童謡「しゃぼん玉」の歌詞です。作詞者は野口雨情(うじよう)さんと言います。
野口さんが童謡の普及に四国へ行っている時、2歳になる娘さんが病気で亡くなったとの知らせが届きました。
愛するわが子を突然に失った悲しみの中で、あまりにもはかなく消えたわが子のいのちを想い、この歌を作ったと言われています。このしゃぼん玉を通して、私たちのいのちについて考えてみましょう。
みんな一人ひとりにいのちがあり、そしてそれは「たったひとつのいのち」です。
私たちにはお父さんやお母さんがいて、そのお父さんやお母さんにも、お父さんお母さんがいます。というように、ずっとずっとつながっていて、そうしたつながりの中で、私たちが生きているのです。ですから、たくさんの方からいただいたいのちと言えるでしょう。
そのいのちを大切にし、屋根まで飛ぶしゃぼん玉のように大きく成長してほしい、はかない世の中ではありますが、雄々しくたくましく元気に育ってほしい、と願わずにはいられません。そんな願いが、みなさん一人ひとりにかけられているのです。
しかしながら私たちは、自分ひとりで生きていくことはできません。毎日いただいている食事ひとつをとっても、お米やお野菜を作る人、それを運ぶ人、売る人がいます。そのお米やお野菜で、食事を作ってくださる方々がいます。このようなたくさんの方たちの支えのおかげで、私たちは食事をいただくことができ、たったひとつの大切ないのちを、今日から明日へつなぐことができるのです。
このように私たちは、多くのつながりの中に生きています。あなたも私も、一人ひとりかけがえのない、尊いいのちを生きているのです。「いただいているいのち」「願われているいのち」「支えられているいのち」。「建学の精神」のもとで謳われている、そのようないのちを生きている自分であることを忘れないでください。
とこのように記しています。毎週一回行われます龍谷大平安での仏参で「南無阿弥陀仏」とお念仏することは、阿弥陀さまのご本願を鏡として自分を照らしてみる、つまり、仏さまの鏡に照らして自分を見つめてみるという大切な時間なのです。
最後に、10月の「今月の聖語」に宗教教育係が『ダンマパダ』の言葉を記してくれています。ちょうど、正門を入って直ぐ左の黒板を見てくれていますか?どんな言葉かと言いますと、
先ず自分を正しくととのえ、次(つ)いで他人を教えよ。
と、このような言葉です。どのような解説をしてくれているかと申しますと、
ストレートに心に響く言葉だと思います。まさに自分自身のことを言われているような気になりませんか。みなさんは、この言葉を読んで、どのように感じたでしょうか。
不思議なもので、人の欠点はよく見えてしまいます。私たちは、つい人の欠点や至らないところを指摘しがちですが、自分自身のことは案外見えていないことが多いかも知れません。
人の言動ばかりに気を取られて、肝心の自分自身を見失ってしまってはいけませんね。人に何か言う前には、必ず一度立ち止まり、自分自身の言動を振り返ってみることが大切です。
仏陀が述べるように、日々の言動をこの機会にしっかりと見つめ直して、まずは自分自身を正しく整えることに努めましょう。合掌
どうぞみなさん、仏参では、「南無阿弥陀仏」のお念仏を通して、阿弥陀さまのお慈悲の心を聞かせていただき、少しでも阿弥陀さまを悲しませない生き方を求めて日々を送りましょう。
その生き方を心がけることが、お互いに敬い合い、助け合いながら、日々の生活を送ることにつながるのです。他人への思いやりの心をもって、日々過ごしていただくことをお願いしまして仏参の話を終わります。