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平成28(2016)年度 龍谷大学付属平安高等学校 第1・2学年後期終業式 2017年03月10日(金)14時47分

学校長式辞

 みなさん、おはようございます。
 昨年は、この式の後「人文字」にご協力いただいたのですが、今年は、硬式野球部の甲子園出場はありませんので少し残念です。ですが、フェンシング部の男子が、18年連続21回目・女子が3年連続3回目の選抜大会出場、卓球部の男子が、19年連続25回目・女子が2年連続2回目の選抜大会出場を果たしてくれました。常連のチアダンス部は、世界大会に出場。出場80チームでの予選を通過し、本戦で5位という輝かしい成績を残してくれました。ウィンターカップでも高校は団体2位、中学は3連覇を達成してくれました。今月末に開催されます全国大会にも中学高校ともに出場してくれます。陸上部の中村僚真君も日本ジュニア室内陸上競技大会60㍍で日本一に輝いてくれました。ゴルフ部の中野恵里花さんも全国大会に出場してくれます。剣道部の川原誠君が全日本都道府県対抗剣道優勝大会に京都府代表・先鋒として出場してくれます。柔道部の木村朋弥君が全国高等学校柔道選手権大会に無差別級で出場してくれます。これから大会に挑む各クラブの全国での活躍を心より期待いたしております。
 さて、昨年を振り返ってみますと、創立140周年の記念事業と銘打ってたくさんのことをしました。
①4月1日「平安の願い“三つの大切”―建学の精神―」冊子発行
②5月9日「教育講演会(高1対象)」講師:岩室紳也氏 内容:思春期・若者を知るためのシンポジウム
③5月19日「教育講演会(保護者)」講師:桧山進次郎氏 内容:野球人生を支えた”こころ”(演題)
④5月21日 創立140周年記念日・宗祖降誕会
⑤6月16日「教育講演会(高2・3対象)」講師:水谷 修氏
⑥9月4日~8日 創立140周年記念学園祭(文化祭・体育祭・音楽祭(中学))
⑦11月12日「教育講演会(中・高校生)」講師:太田雄貴氏
      14:00 記念式典 15:30~16:30 記念☆生徒パフォーマンス 17:00 記念祝賀会・記念同窓会
 11月12日には多くの文化系クラブにたいへんお世話になりました。特に、吹奏楽部には祝賀会・同窓会にも演奏いただき本当にお世話になりました。この場をお借りして、みなさんに感謝申し上げます。
 みなさんが、直接知らなかった事業も含めてたくさんの催しをしてきました。明治9(1876)年に滋賀県彦根の地に「金亀教校」として創立された平安は126年間男子校でありましたが、2003(平成15)年に男女共学となり、5年後の2008(平成20)年に龍谷大学付属平安中学校・高等学校と校名を変更しました。そして、昨年、めでたく創立140周年を迎えたのです。3年生の411名が3月1日に卒業しましたので、平安中学・高校の卒業生総数は約43,000名ということになります。知っておいてください。
 いよいよそれぞれの学年のフィナーレを迎えようとしています。この1年は、みなさんそれぞれにとって成長の1年でしたか。進歩の1年でしたか。
 今日は、高校3年生の終業式や卒業証書授与式でも、お話した内容なのですが、昨年9月PHP研究所から発行されました、大谷光淳ご門主著述の「『ありのままに、ひたむきに』~不安な今を生きる~」から、一つご紹介させていただきます。
 これからの時代、人工知能(AI)あるいは人型ロボットの進化で、「人が生きていくこと」の意味が、改めて問われるようになってきます。おそらく、いまの四十代半ばから下の人たちにとっては、自分たちの仕事に影響する極めて現実的な問題になると思います。若い人の場合は、社会の中で今、人がしている仕事を、ロボットがどんどんこなしていく時代に直面するわけです。
 人間関係の悩みにしても、携帯電話のなかった時代とある時代とではやはり違います。携帯電話(スマートフォン)が普及した現代の日本でも、通話目的だけで使っている人と、不特定多数の人とつながるツールとして使っている人とでは、かかえる問題が違います。
 特に、私より若い世代の人たちの情報源は、新聞・テレビ・本という媒体からインターネットという媒体に変化し、人との交流には、インターネットによるコミュニケーションの手段であるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使う人が増えています。そこで起こる不特定多数の人との交流が招く問題などを考えれば、SNSなどのツールをどう上手く活用するかを考えていかなければなりません。
 時代の変化とともに、特に若い人のかかえる悩みは変化していくということを、もっと意識していく必要があるのではないかと思います。
 とこのように記されています。
 現在、人間が開発した人工知能「AI」がますます高度なことを成し遂げようとしています。いったい人間が作り出した機械の頭脳は、いつまで人類の手の中にいるのでしょう。機械が人間を操る時代がもうそこまで来ています。
 例えば、みなさんはEyeSight(アイサイト)ってご存知ですか。EyeSightとは「衝突被害軽減ブレーキ」のことです。車内前方に装備されたステレオカメラで前方を監視し、障害物を三次元的に認識することで、自動ブレーキ、クルーズコントロール等を制御する「運転支援システム」のことです。
 実は、ご門主さまは、昨年11月12日の創立140周年記念式典でのお言葉の中でも人工知能について言及されました。式典でお話になった内容はこのようなものです。
 人間とロボットの違いは何であるのか。その違いは私たち人間には心がある、だからこそ宗教を持つということでありましょう。新聞によりますと、人工知能の全自動の車が動き始めた時、私たち人間は、究極的な選択を迫られることになります。
 それは、全自動で走っている車の前に突然、人が飛び出してきたとき、その車は飛び出してきた人を守るように行動するのか、あるいは、乗っている人を守るように行動するのか、ということを私たち人間が決めなければいけない。すべての人を守ることが出来ない状況をどのようにロボットに行動をさせるのかということを私たちが決めなければいけません。
 科学技術の発達した現代であるからこそ、私たち人間の生き方が問われることになります。そして、それは、日々の生活の中で私たちがどのように自分の命の問題を考え、周りの家族の方、友達のことなどを考え生活していくかということにつながります。
 その背景には、必ず宗教が必要になります。浄土真宗のみ教えを建学の精神とする龍谷大学付属平安高等学校・中学校、これからも建学の精神を大事にされ、多くの生徒やその保護者に対し、浄土真宗のみ教えと宗教をもとにした教えを伝えていただくことを切にお願い申し上げます。 というお言葉でありました。
 日常生活の中で、悩みや苦しみを抱えながら生きていかなければならない私たちにとって、お釈迦さまは「必ず救い取るぞ」の阿弥陀さまのご本願をお説きくださり、人がひととして生きる道をお示しくださいました。その教えを受けて、真実の人生を歩まれた親鸞聖人は、阿弥陀さまのご本願を聞きひらいた時、自己を真摯に見つめ、かけがえのない「いのち」を大切に生きていく道が開かれてくると教えてくださいました。
 龍谷大平安の願いは、みなさんの心に「思いやりの心」を育て、「自制・協力・調和の心」を育む。そんな豊かな心をもった人間に育ってほしいというものです。それを、具体的に日常の心得として「ことば・じかん・いのちを大切にする生き方を学びましょう」と呼びかけているのです。
 記念式典でのご門主のお言葉、「人間とロボットの違いは何であるのか。その違いは、私たち人間には心がある、だからこそ宗教を持つということでありましょう」正に、「IQ」(知能指数)や「SS」(偏差値)のように数字では表すことのできない大切なもの、「EQ」、「こころの知性」、「こころ」を育てることこそが、実は、仏教的なものの見方のできる人間を育てることであり、それが本校の「徳育」に他ならないのです。
 学校という学舎(まなびや)は、勉強を学ぶことはもちろんですが、それよりも何よりも集団生活の中で良き友人関係を構築する修練の場です。その土台になる感性、つまり「こころの知性『EQ』」を磨く大切な期間です。それぞれ3年生や2年生に進級しますが、「こころの進歩」を意識して、良好な人間関係を作ってください。
 最後に、このように今年度は、龍谷大平安にとって記念すべき年でありました。目に見える華やかさではなく“目に見えないもの”の大切さ、「こころの知性」の大切さを再確認して、われわれは決して一人で生きているのではなく、他に支えられて生かされているからこそ、人と人との関係性を何よりも大切にしなければならないということを、今一度確認しておきましょう。
 そして、明日3月11日は、東日本大震災からちょうど6年となります。未だ8万人近い人が避難生活を送っておられます。私たちはこのことを決して忘れてはなりません。本日から3日間、生徒会執行部が中心となって、京都駅・京都タワー及び中央郵便局前にて募金活動を行います。何も出来ないかもしれませんが、こうした活動を通して寄り添う気持ちはしっかりと持っていましょう。ご協力の程よろしくお願いします。
 平成28(2016)年度のスローガン
 おかげさまで~140周年~ありがとう“感謝”
 この言葉をもって本年度のフィナーレとしたいと思います。以上、私の式辞といたします。