【ご案内】
PHP研究所創設70周年記念 ◆特別対談◆
とらわれず、執着しないことが大切です
遠藤保仁(プロサッカー選手・ガンバ大阪)×大谷光淳(西本願寺 門主)
親鸞聖人の血脈を継ぐ西本願寺の新しい門主と、サッカー日本代表でも活躍するガンバ大阪キャプテンのお二人に、PHP創設70周年を記念し、普段から大切にしていることを話していただきました。
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遠藤 初めてお目にかかります。お会いするのをとても楽しみにしていました。
大谷 こちらこそ、ありがとうございます。テレビでは、サッカーの試合をよく見ています。たとえば野球とは、スタジアムの雰囲気がかなり違いますね。
遠藤さんは、サッカーの魅力は何だと思いますか。
遠藤 ボールに集中して、ゴールを決める、ゴールを守るというのは、とにかく楽しいです。それから、チームメイトと助け合いながら、喜びや悔しさを分かち合って、一つずつステップアップできるのは大きな喜びです。
余計なことを考えずに全力を出す
大谷 遠藤さんはべテランですね。若い人たちにはどんな指導をしますか。
遠藤 たとえば、周りの選手がミスした場合、僕はまず褒めるんですよ。「こういうプレーのほうがよかったんじゃないか」といったことは試合後に言いますが、選手にはそれぞれ自分のサッカー観があります。だから、その選手が自信を持って自分のプレーをしたのであれば、ミスをしても褒めますね。そもそもミスをしない人はいませんから。
大谷 人はどうしても、物事を自分中心に考えてしまいがちです。だから、自分が思っていることと違うことをされると、「どうして?」と思ってしまいます。そうしたことを考えても、遠藤さんがおっしゃった視点を持つことは、とても大事だと思います。
遠藤 「自分の短所を隠さない」ことも、大事にしています。足が遅いことやへデイングが苦手なことなどの短所があるのですが、それを隠さずにオープンにした上で、伸ばすように努めています。僕の短所をほかの選手が得意にしている場合もあるので、「お願い、ここは頼むよ」と言うこともあります。その代わり、自分のいい部分でほかの選手からしたら短所になる部分を、その選手のために僕が補うこともあります。
大谷 すばらしいですね。私は自分の短所を隠したくなる(笑)。ただ、少なくとも自分の短所に気づかないと隠しようもない。その意味では、自分の身に引き寄せて考えたり、人の話を聞いたりして、常に自分のことも意識することが大切でしょうね。
プロスポーツ選手には、高い技術と強い精神力が求められると思いますが、遠藤さんはどちらがより重要だと思いますか。
遠藤 精神面、メンタルだと思います。「体を動かすのは心」だと、僕は思っているので。もちろん技術も大切ですが、「最後にものを言うのは根性」といった場面もあります。つらくても、ここで走らなきゃいけない、といった場面で走れるかどうかは、気持ちの強さにかかってくると思います。
大谷 きつい状況で、がんばれる源は何でしょうか。
遠藤 「勝ちたい」という思い、執念ですね。絶対に優勝したい、とか。日本代表の選手には、そうした執念を持った、メンタルの強い選手が多いように感じます。
ただ一方では、心を〝さら〟にして臨むことも大切だと思っています。特に試合では、余計なことを考えずに、その場に集中して、全力を出し切ることが大事です。
大谷 「とらわれない」「執着(しゅうじゃく)しない」ことが仏教では大事な教えの一つです。自分の考えにとらわれると、悩みや苦しみの原因にもなります。自己中心的な考えに陥っていないか、ときおり省みることが必要でしょうね。
遠藤 相手チームについても、味方の選手についても、情報は可能な限り入れるけれど、それらを踏まえた上で、さらというか、白紙の状態で試合に臨むことが望ましいような気がします。
「受け容れてもらえる」安心感を
大谷 自分の置かれている状況やまわりの状況を把握したうえで、そのときどきにいい選択ができることが大切ですね。
私も人と懇談させていただく際、自分が話したいことを前もって用意しますが、すべて出そうとせずに、できるかぎりその場の状況に合わせるように心がけています。
ところで、遠藤さんにとって、理想のチーム、あるいは理想の監督といったものはありますか。
遠藤 監督が何も言わないチームがいいですね(笑)。選手が自ら気づき、自ら動いて、結果を出す。監督は指示を出したら、あとはべンチに座って見ているだけ。そういうチーム、そういう監督が一番よいと思います。でも、どこのチームの監督もだいたい怒鳴っていますけどね(笑)。
大谷 新聞に書いてありましたが、最近、急に成績のよくなった大学野球のチームがあるようです。そこでは監督が代わって、学生がコーチとしてサインなども出すようになったそうです。選手が自主的に考え、行動するようになったことが、好成績につながっているのだと思います。
遠藤 実際にブレーしているのは、選手なので、本来であれば、選手が気づいて「こうしたほうがいい」と監督に言って、許可を得るのが一番いいのです。監督からアクションして、選手がリアクションするというのはあまりよくないと思います。
大谷 監督と選手の信頼関係について、お話しいただけますか。
遠藤 重要なことですね。選手は「監督から必要とされている」と思えば、自分自身に責任感が出てきます。すると「このチームを、この監督を勝たせる!」「勝てるチームにしていきたい!」という主体的な気持ちが自然に出てきます。そのなかで相談したり、意見を交わしたりすると信頼関係を築くことができます。
大谷 なるほど。人と人との関係はなかなか簡単に築けるものでないですし、宗教の場合も、一般生活の場合も、信頼、つまり「受け容れてもらえる」という安心感が大切ではないかと思います。
以上、『PHP11月』PHP研究所創設70周年記念号に特別対談として掲載されました。この内容は、下記の著書に収録されています。
『ありのままに、ひたむきに ~不安な今を生きる~ 』西本願寺門主 大谷光淳著
親鸞聖人の血脈を継ぐ第25代門主が語る難しい時代を生きるヒント!
PHP研究所648円(税込)
対談●遠藤保仁さん(ガンバ大阪)とともに
ぶれることなく
思いを伝える
ともに、よい方向をめざして
おかげさまで ~140周年~ ありがとう“感謝”
12月 御命日法要
○ 日時 12月16日(金)16時~
○ 場所 礼拝堂
○ 法話 小川智成 先生
◎ みなさん、お揃いでお参りください。