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平成28(2016)年度 龍谷大学付属平安中学校 後期終業式 2017年03月18日(土)16時40分

学校長式辞
 みなさん、おはようございます。
 昨年は、硬式野球部が選抜大会に出場ということで、「人文字」をつくりましたというご報告をしたのですが、今年は、硬式野球部の甲子園出場はありませんので少し残念です。ですが、フェンシング部の男子が、18年連続21回目・女子が3年連続3回目の選抜大会出場、卓球部の男子が、19年連続25回目・女子が2年連続2回目の選抜大会出場を果たしてくれました。常連のチアダンス部は、世界大会に出場。出場80チームでの予選を通過し、世界で5位という輝かしい成績を残してくれました。ウィンターカップでも高校は団体2位、中学は何と3連覇を達成してくれました。今月末に開催されます全国大会にも中学高校ともに出場してくれます。陸上部では3年生の中村僚真君が日本ジュニア室内陸上競技大会60㍍で日本一に輝いてくれました。ゴルフ部の中野恵里花さんも全国大会に出場してくれます。剣道部の川原誠君が全日本都道府県対抗剣道優勝大会に京都府代表・先鋒として出場してくれます。柔道部の木村朋弥君が全国高等学校柔道選手権大会に無差別級で出場してくれます。これから大会に挑む各クラブの全国での活躍を心より期待いたしております。
 さて、昨年を振り返ってみますと、創立140周年の記念事業ということで、
①4月1日「平安の願い“三つの大切”―建学の精神―」冊子発行
②5月9日「教育講演会(高1対象)」講師:岩室紳也氏 内容:思春期・若者を知るためのシンポジウム
③5月19日「教育講演会(保護者)」講師:桧山進次郎氏 内容:野球人生を支えた”こころ”(演題)
④5月21日 創立140周年記念日・宗祖降誕会
⑤6月16日「教育講演会(高2・3対象)」講師:水谷 修氏
⑥9月4日~8日 創立140周年記念学園祭(文化祭・体育祭・音楽祭(中学))
⑦11月12日「教育講演会(中・高校生)」講師:太田雄貴氏
      14:00 記念式典 15:30~16:30 記念☆生徒パフォーマンス 17:00 記念祝賀会・記念同窓会
 特に中学生のみなさんには、記念式典に参加していただき素晴らしい振る舞いで臨んでくれたことをたいへん嬉しく思います。たくさんの来賓の方々からお褒めの言葉をいただきました。ありがとうございました。
 明治9(1876)年に滋賀県彦根の地に「金亀教校」として創立された平安は126年間男子校でありましたが、2003(平成15)年に男女共学となり、5年後の2008(平成20)年に龍谷大学付属平安中学校・高等学校と校名を変更しました。そして、昨年、めでたく創立140周年を迎え、今春、高校3年生411名が卒業しましたので、平安中学・高校の卒業生総数は約43,000名ということになります。知っておいてください。
 さて、いよいよそれぞれの学年のフィナーレを迎えようとしています。この1年は、みなさんそれぞれにとって成長の1年でしたか。進歩の1年でしたか。
 先日の卒業証書授与式でお話した内容を覚えてくれていますか。大谷光淳ご門主がお書きになった「『ありのままに、ひたむきに』~不安な今を生きる~」というご本から、一つ紹介しましたね。
 これからの時代、人工知能(AI)あるいは人型ロボットの進化で、「人が生きていくこと」の意味が、改めて問われるようになってきます。みなさんが社会に出る頃には、今、人がしている仕事を、ロボットがどんどんこなしていく時代に直面するという内容です。
 現在、人間が開発した人工知能「AI」がますます高度なことを成し遂げようとしています。いったい人間が作り出した機械の頭脳は、いつまでわれわれ人間の手の中にいるのでしょう。機械が人間を操る時代がもうそこまで来ています。
 例えば、みなさんはEyeSight(アイサイト)ってご存知ですか。EyeSightとは「衝突被害軽減ブレーキ」のことです。車内前方に装備されたステレオカメラで前方を監視し、障害物を三次元的に認識することで、自動ブレーキ、クルーズコントロール等を制御する「運転支援システム」のことです。
 このことについても、ご門主さまは、昨年11月12日の創立140周年記念式典で触れられました。みなさんは、式典に参加してくれていたので覚えてくれていますね。
 人間とロボットの違いは何であるのか。その違いは私たち人間には心がある、だからこそ宗教を持つということである。人工知能の全自動の車が動き始めた時、私たち人間は、究極的な選択を迫られることになる。
 それは、全自動で走っている車の前に突然、人が飛び出してきたとき、その車は飛び出してきた人を守るように行動するのか、あるいは、乗っている人を守るように行動するのか、ということを私たち人間が決めなければいけない。すべての人を守ることが出来ない状況をどのようにロボットに行動をさせるのかというそうしたことを、私たちが決めなければいけないということです。
 科学技術の発達した現代であるからこそ、私たち人間の生き方が問われることになります。そして、それは、日々の生活の中で私たちがどのように自分の命の問題を考え、周りの家族の方、友達のことなどを考え生活していくかということにつながります。
 記念式典でおっしゃった「人間とロボットの違いは、私たち人間には心がある、だからこそ宗教を持つということである」というご門主のお言葉は、正に、「IQ」(知能指数)や「SS」(偏差値)のように数字では表すことのできない大切なもの、「EQ」、「こころの知性」、「こころ」を育てることこそが、実は、仏教的なものの見方のできる人間になることです。
 冒頭に申しました「進歩」というのは、学年のフィナーレを迎えて、この1年あるいは2年で、みなさんの「こころ」は、どのように「進歩」したかということです。
 他人と比べて外から見える「進歩」ではなく、外から見えない自分の内側にある「こころの進歩」が大切なのです。「こころの進歩」とは、ほかの人と比べてよりよい人間になることを言うのではなく、自分がいかに自己中心的な人間であるかに気づきはじめることを言います。そこに気づけば、おのずと他人に対して謙虚になります。
 私たちの日常は「すべて他人が悪い」と思い、人の「良さ」や「痛み」に心を向けることなく、自己中心的に暮らしているのです。「自分は間違っていない、すべて他人が悪い」と思い込んでしまいがちなのです。
 学校という学舎(まなびや)は、勉強を学ぶことはもちろんですが、それよりも何よりも集団生活の中で良き友人関係を構築する修練の場です。その土台になる感性、つまり「こころの知性『EQ』」を磨く大切な期間です。それぞれ3年生や2年生に進級しますが、「こころの進歩」を意識して、良好な人間関係を作ってください。
 最後に、このように今年度は、龍谷大平安にとって記念すべき年でありました。目に見える華やかさではなく“目に見えないもの”の大切さ、「こころの知性」の大切さを再確認して、われわれは決して一人で生きているのではなく、他に支えられて生かされているからこそ、人と人との関係性を何よりも大切にしなければならないということを今一度肝に銘じておきましょう。
 そして、今年の3月11日で、東日本大震災からちょうど6年が経ちました。未だ8万人近い人が避難生活を送っておられます。私たちはこのことを決して忘れてはなりません。3月10日から3日間、生徒会執行部とインターアクトクラブが中心となって、京都駅・京都タワー及び中央郵便局前にて募金活動を行ってくれました。何も出来ないかもしれませんが、こうした活動を通して「寄り添う」という気持ちをしっかりと持っていましょう。
 平成28(2016)年度のスローガン
 おかげさまで~140周年~ありがとう“感謝”
 この言葉をもって本年度のフィナーレとしたいと思います。以上、私の式辞といたします。