学校長式辞
桜花爛漫の今日の佳き日、本日ここに、龍谷大学付属平安中学校の平成29(2017)年度入学式を挙行いたしましたところ、浄土真宗本願寺派社会部部長 白川了信 様、龍谷大学学長 入澤 崇 様をはじめ、平安同窓会・保護者会の役員の方々、多数のご来賓のご臨席を賜り、衷心より御礼を申し上げます。
新入生99名のみなさん、龍谷大学付属平安中学校へのご入学、おめでとうございます。新入生の保護者のみなさま、ご子女の晴のご入学を心よりお祝い申し上げます。誠におめでとうございます。
さて、今から6年前の3月11日、東日本大震災が起きました。また、今から22年前の1995年1月17日、阪神淡路大震災が起きました。時間とともに記憶から薄れてしまいそうになりますが、私たちはこのことを決して忘れることなく心に刻んでおかなければなりません。そして、今こうして今日のこの日が迎えられたことを、心から「ありがたい」と感謝いたしたいと思います。
それでは私の式辞は、つい先日、頂戴しました一冊の本の内容から少し紹介いたします。「目的が一番、目標が二番」と記されており、こころを磨く、メンタルトレーニングについて、書き出されています。
メンタル・トレーニングでは、最初に「夢のような目標」を考え、その次に「最低限度の目標」を決め、そこから五十年後、三十年後、十年後、五年後、四、三、二、一年後、さらに半年後、今月、今週、今日の目標まで落としてくることが大事であると書かれています。つまり、何でも長期的に物事を考えて、その上で、今から向かう方向性を考える必要があるというのです。
大切なことは、「ゴールを決める」ということです。私たちはとかく、今を何とかしようとばかり思い、小手先の変化ばかりを追い求め、うまくいくかいかないかは時の運に任せているように思います。そして、いつも「こんなに頑張っているのに、なんでうまいこといかないんだ」と口癖のように言っています。
たとえば、みなさんは「旅行に行くときに、まず何を決めますか?」
当たり前ですが「行き先」と応えるでしょう。
「そうですね。行き先を決めなかったらスタートからどこに行っていいかわからないですね。では次は?」
みなさんは「いつ行くか」と応えてくれるでしょう。
「そうですね。一緒に行く人の予定とかも確認しなければならないし、泊まるところも予約しないといけ ませんね。では次は何を決めますか?」
今度は「何で行くか? バスとか電車とか」と応えてくれるでしょう。
「それが方法です。家族と行くのであれば、お金のことも考えて、できるだけ安く行く手段としてバスを 使うかもしれません。また、日程がなくて少しでも早く着きたいと思えば、新幹線や飛行機を利用するか もしれませんね」
「さて、今の話って、実は、すごく大切な意味が含まれているのですが、それは何だかわかりますか?」
「それは、目標が決まらないと何も決まらないということです。どこのホテルを予約するのか、バスなのか電車なのか、予算はどれくらいなのか?これらは、目標があるからできることです。つまり、目標を決めるということがとても大切なのです」
では次に…
「この旅行は、誰と行きますか?」
中学生のみなさんなら「家族」と応えるでしょう。
「もし、みなさんが大人だとして、何の制限もなく旅に行けるとしましょう。場所は宮城県にします。
さて、みなさんは、どういう目的でそこに行く可能性がありますか?」
色々考えられますね「仕事、出張、友だちと旅行、新婚旅行もあるかもしれません。ボランティアとして 行きたいと思う人もいるかもしれません」
「どうでしょうか? 何をしに行くかで、旅行がずいぶん変わってきますね。仕事として行くのか、観光 としていくのか、ボランティアとして行くのか。「宮城県に行く」という目標は同じですが、目的が違う だけで、また交通手段や日程なども変わってくるのです」
「つまりは、何のためにそれをするのかというのが、一番大切だということです。たとえば、クラブ活動で大会で優勝したいと思ったとしましょう。これは目標です。でもこれだけだったら、たとえばズルいことをして、相手チームが嫌がるような言葉をいっぱい言って精神的に崩してでも勝てばいいんだ、ということになりかねません。でも、これで嬉しいでしょうか?嬉しくなんかないと思います。それよりも、優勝した後、後輩が『先輩みたいなチームになりたいです』という憧れを抱いてくれたり、いままで応援してくれた人が、涙を流して喜んでくれたり、そういうところに優勝の価値があるのではないでしょうか。それが、部活を頑張る目的になるのです。勉強でも同じです。ただ単にテストで百点を取るだけでは弱いです。何のために百点を取るのか? 最初は親に喜んで欲しいでもいいでしょう。しかし、将来の夢に近づけるとか、自分に自信が持てるとか、こういったものを持っている人は、決してぶれることはありません。だから目的が一番で、目標が二番なんです」と、このような内容が記され、さらに次のように続きます。
そして、目的や目標が決まれば、次は具体的にどうするかを考えましょう。こんなことがよくあります。目的や目標はなかなか立派に立てているのですが、そのために具体的に何をすればいいのかがわからないということもあるでしょう。こういう時は、具体的に紙に書いてみましょう。ただ単に「毎日、数学を頑張る」というような漠然とした予定しか書けない場合は、それをもっと具体的にしましょう。
毎日、教科書を何ページ学習し、間違えたらどうするのかを具体的に確認する。また、クラブ活動であれば、毎日、腹筋や腕立て伏せを何回するとか、できなかったらどうするのかを具体的に確認し、紙に書いてみることです。
宿題でもそうです。提出期限のある場合は、その期日から逆算してみることです。とはいうものの、提出日の前日になって、慌てて課題をこなすというケースも多いのではないでしょうか。そんな感じでやると、やり方もいい加減で、中身もいい加減になってしまいます。この時点で、目的は「課題を提出期日に出す」ということになってしまっています。そうなれば、どんなに目的や目標が立派でも、目的がぶれてしまっていますから、その目的や目標は達成されないことになります。
だから、逆算をして計画を立てる力がとても大切なのです。たとえば、全部で十枚のプリントを一週間で完成しなければならないとしましょう。そうすると最初の4日間は一日一枚、残りの3日間は一日二枚ずつと決めればいいことになります。もちろん人によって、習い事やクラブ活動などの都合もあるでしょうから、それぞれの計画が必要になります。日曜日はクラブの試合があり、土曜日もその試合に向けての最終調整をしたいと考えたら、5日間で二枚ずつやれば最初の5日間で終わります。
こうした短い「じかん」を計画性を持ってしっかりと過ごすことで、将来に向けたイメージも育ってくるのです。
これから大人の階段を一段一段のぼっていくみなさんへ、どうか、常に目的や目標を持ちながら、日々の生活では他人に対して、優しい思いやり溢れることばを口にし、じかんを大切にしながら、それぞれのいのちを磨き輝かせてください。それが「ことば・じかん・いのちを大切に」と申しております龍谷大平安の願いであります。
我々教職員は、君たちを時には叱り、時には励ましの声を常にかけ続け、特に担任は、みなさん一人一人と膝と膝をつき合わせて、しっかりと関わっていきます。みなさんは、しっかりと「こころの知性」を磨き、人間力を高めるべく心豊かな中学校生活を送られますことをお願いしまして、私の式辞といたします。