学校長式辞
みなさん、おはようございます。
さて、今日は嬉しいお知らせからいたします。もうすでに、みなさんはご存知だと思いますが、本校卒業生の辻 一弘さん(昭和63年卒業)が、日本時間でいいますと、3月5日(月)第90回アカデミー賞メイク・ヘアスタイリング賞を受賞されました。10年ぶり3度目のノミネートで初受賞されました。
本年、2018年3月30日公開予定の映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で主演ゲイリー・オールドマンの特殊メイクを担当した日本人アーティストであります。
ゲイリー・オールドマンの迫真の演技を盛り立てた特殊メイクは、毎日およそ3時間半を要し、似ても似つかないその風貌をチャールズへと変身させたその完成度の高さは話題となっており、高い評価を得ていました。
この部門では、日本人初の受賞ということで、教職員・在校生のみなさんはもちろんのこと、学校関係者ならびに平安の同窓生にとって誇りであり、この上ない喜びであります。
さて、クラブ活動では、フェンシング部の男子が、19年連続22回目・女子が4年連続4回目の選抜大会出場、卓球部の男子が、20年連続26回目・女子が3年連続3回目の選抜大会出場、剣道部の男子が、3年ぶり3回目の選抜大会に出場してくれます。
また、ウィンターカップで高校は団体2位、中学は4連覇を達成してくれました常連のチアダンス部も、今月末に開催されます全国大会にも中学高校ともに出場してくれます。個人では陸上部男子が日本ジュニア室内陸上競技大会60㍍で第5位に入賞してくれました。また、女子では10月に開催された愛媛国体で京都チームの第一走者をつとめ全国2位に輝いてくれています。柔道部も個人81㎏級で全国高等学校柔道選手権大会に出場してくれます。これから、大会に挑む各クラブの全国での活躍を心より期待いたしております。
いよいよそれぞれの学年のフィナーレを迎えようとしています。この1年は、みなさんそれぞれにとって成長の1年でしたか。進歩の1年でしたか。
今日は、高校3年生の卒業証書授与式でお話した内容をご紹介いたします。
まず、3月1日、3年生の476名がこの学舎を巣立っていきましたので、平安中学・高校の卒業生総数は約43,000名を超えました。知っておいてください。
さて、みなさんも、卒業の時に同窓会からの記念品として『仏教聖典』をもらわれます。その中に「ほとけの『おしえ』」について、記されている一節があります。第1章の第二節に、「不思議なつながり」と題されて、次のように記されています。
人びとの苦しみには原因があり、人びとのさとりには道があるように、すべてのものは、みな縁(条件)によって生まれ、縁によって滅びる。
雨の降るのも、風の吹くのも、花の咲くのも、葉の散るのも、すべて縁によって生じ、縁によって滅びるのである。
この身は父母を縁として生まれ、食物によって維持され、また、この心も 経験と知識とによって育ったものである。
だから、この身も、この心も、縁によって成り立ち、縁によって変わるといわなければならない。
網の目が、互いにつながりあって網を作っているように、すべてのものは、つながりあってできている。
花は 咲く縁が集まって咲き、葉は 散る縁が集まって散る。ひとり咲き、ひとり散るのではない。
縁によって咲き、縁によって散るのであるから、どんなものも、みなうつり変わる。ひとりで存在するものも、常にとどまるものもない。
すべてのものが、縁によって生じ、縁によって滅びるのは永遠不変の道理である。だから、うつり変わり、常にとどまらないということは、天地の間に動くことのない、まことの道理であり、これだけは永久に変わらない。
と、このように教えてくださっています。私たちがよく使う「ご縁」という言葉は、仏教の根底を成す考え方で、お釈迦さまが説いた大切な教えである「縁起」に由来しています。
お釈迦さまはさとりを開かれ、その後45年間にわたりさまざまな教えを説かれましたが、その教えの根本が「縁起」であるといわれています。「縁起」とは、この世のあらゆるものは時間的にも、互いに関係し合い、結びつき合って存在しているのであり、バラバラに存在しているようであっても、個別に単独で存在しているものはないという、この世の真実のあり方を示しています。
親鸞聖人も「遠く宿縁を慶べ」と述べられています。仏法に出あい、阿弥陀さまのみ教えに導かれる身となったことを、遠い過去からのはかり知れない「ご縁」によって与えられ導かれてきたと慶ばれているお姿は、「縁起」の理念のもとに、「ご縁」をこよなく慶ばれているお姿のあらわれであります。
また、仏教の根本的な理念を示す三法印という教えがあります。諸行無常、諸法無我、涅槃寂静の三つですが、こうした仏さまの教えをみなさんは、宗教の授業や宗教行事などさまざまなところで学んでいます。
このような宗教的情操教育が、少なからずみなさんの心に培われたことが、先月2月20日の本願寺新報『宗門校に学んで』に掲載された記事からうかがえます。本校3年生の「世は無常 怠りなく努力」と題した文章で、次のように記してくれています。
3年間を通してよく耳にしたのは、「世は無常である。怠りなく努力せよ」という釈尊のお言葉。仏教の根本的な「無常観」を表している言葉です。
平安高校では仏参や宗教行事、教室に掲示された言葉などさまざまな場面で「無常」を意識することができました。そのおかげで自分の行動に意味や目的を持つようになり、本当に充実した日々を送ることができました。また、悩みを抱えている時や少し浮かれている時には、「永遠に続かない」と自分に言い聞かせ、前向きに進むことができたように思います。
これから大学生、社会人と自由に時間の使い方を選ぶことができるようになる前に、このような貴重な経験ができたことに感謝しています。卒業後も変わらず、充実した時間を自分で生み出すことができるよう、「無常」という考え方を念頭に置きつつ、怠りなく努力をしていきたいです。
と、このように綴ってくれています。実にみなさんが龍谷大平安で学ぶ意義はここにあるのです。そして、少しでも、巣立っていった卒業生の心に薫習できたことを、心から嬉しく思いました。
学校という学舎(まなびや)は、勉強を学ぶことはもちろんですが、それよりも何よりも集団生活の中で良き友人関係を構築する修練の場です。その土台になる感性、つまり「こころの知性『EQ』」を磨く大切な期間です。それぞれ3年生や2年生に進級しますが、「こころの成長」を意識して、良好な人間関係を作ってください。
最後に、目に見える華やかさではなく“目に見えないもの”の大切さ、「こころの知性」の大切さを再確認して、われわれは決して一人で生きているのではなく、他に支えられて生かされているからこそ、人と人との関係性を何よりも大切にしなければならないということを、今一度確認しておきましょう。
そして、明後日3月11日は、東日本大震災からちょうど7年となります。また、1995年1月17日、阪神淡路大震災が起きましてから今年で23年が経過しました。時間とともに記憶から薄れてしまいそうになりますが、私たちはこのことを決して忘れることなく心に刻んでおかなければなりません。そして、今こうして今日のこの日が迎えられたことを、心から「ありがたい」と感謝いたしたいと思います。
本日から3日間、生徒会執行部が中心となって、京都タワー前およびアバンティー前にて募金活動を行います。何も出来ないかもしれませんが、こうした活動を通して寄り添う気持ちはしっかりと持っていましょう。ご協力の程よろしくお願いします。
みなさんは、これから、それぞれ上の学年と進まれ、一段一段大人の階段を上って行かれます。繰り返しになりますが、本当の意味で、目先の目に見える華やかさではなく“目に見えないもの”の大切さ、つまり、ありのままの自分を見つめ、しっかりと「こころを磨くこと」を意識して、そういう生き方を心がけて日々精進してくださることをお伝えして私の式辞といたします。
東日本大震災募金活動について
・日程)平成30年3月9日(金)~3月11日(日)13:30~15:30
場所)京都タワー前及びアバンティー前