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仏参講話(中学生対象)より 2012年10月19日(金)09時40分

平成24年度 中学 仏参講話          10月19日(金)

みなさん、おはようございます。
 15日の後期始業式に、仏参の意義を改めてお話しいたしました。そして、仏参の意義に続いて、10月の今月の言葉、東井義雄さんの言葉を再確認いたしました。
「見えないところがほんものにならないと、見えるところもほんものにならない」
 東井義雄さんは、兵庫県出石郡の浄土真宗のお寺(東光寺)に生まれられ、その後、豊岡市の小学校に赴任され40年間に渡る教員生活を終えられました。その間、数々の教育功労賞等を受賞され、また、退職後も大学講師を務めながら、教育活動を続けられ、日本のペスタロッチーと言われた方であります。ちなみに、ペスタロッチーは、一言で言えば現代の小学校教育をつくった人と言えましょう。それでは、東井義雄さんの言葉をもう一つ紹介いたしましょう。
「見えないところで 見えないものが 見えるところをささえ 生かし 養い あらしめている」
本当はこうあらねばならないのに、人間って、どうして、エゴの塊なのでしょうね。エゴとはエゴイズムのことで、利己主義と訳され、自己中心的なことを言います。人はとかく、勝利すれば自分一人がやり遂げたような顔をし、褒められればこれまた自分一人が誇らしげに成し遂げたような顔をし、あさましいですね。私は、その人たち一人一人の努力を、決して否定しているのではありません。一生懸命、努力した結果として勝ちとったのでありますから、それはそれで素晴らしいことです。しかし、考えてみてください。人間が一人だけで出来ることというのはたかがしれています。結論的に言うと、だれ一人として、一人では生きていけないのです。みんなに支えられながら、みんなに助けられながら、生きているのです。今年の夏は、ロンドンオリンピックで日本中が盛り上がり、たくさんの日本選手がメダルを獲得しました。そのだれもが、インタビューで言うのが、「みなさんのおかげです。」「感謝します。」と口を揃えて言います。申し合わせているわけでも何でもありません。自分をギリギリまで追い込んで、世界のトップレベルで戦った人たちだからこそ、「見えないところで、見えないものが」、ひのき舞台の「見えるところ(のメダルを勝ちとった自分)を」支え、生かし、養い、あらしめていることを知っているのです。
 最近では、ノーベル医学・生理学賞を授賞された京都大学の山中伸弥教授もその一人であります。
 山中伸弥教授は、臨床研修医から研究者へなられた方ですが、研修医時代は、手術に手間どったり、点滴に失敗するなど“やまなか”ではなく“じゃまなか”と怒鳴られ「向いていない」と痛感したらしいです。その後、重症のリウマチ女性患者の全身の関節が変形した姿を見てショックをうけ、研究の道へ進まれました。生命科学研究の最先端 iPS細胞の研究は、再生医療に必須のものであります。日米の研究環境の違いでも、たいへんご苦労されて、半分うつ状態になられたこともあると聞いています。しかし、夢の実現に向けてのたゆまぬ努力によって、今回の授賞につながったということです。正に努力の人である、山中伸弥教授でも、授賞後のインタビューで「みなさまのお陰です」「家族の支えがあってこそです」「妻やみなさまに感謝です」と言われてました。
 それでは、今から33年前の1979年にノーベル平和賞を授賞されたマザー・テレサの授賞式の言葉を紹介しましょう。授賞理由は、長期間にわたる献身的な働きにより、苦しみのなかにいる人々に安息をもたらした、というものであります。それでは、スピーチの内容を紹介します。

祈りましょう
主よ 私は平和を伝える道具になりたい
憎しみには愛で応えます
罪には赦しの心で接します
争いには和をもたらし  過ちには真理を与えます
疑念には信頼で応え  絶望には希望を与えます
闇には光をもたらし  悲しみには喜びで応えます
癒されることより癒すことを
求められるように  なりますように
そして理解されるより  理解することを
愛されることより  愛することを
なぜなら
人は忘れるからこそ気づくのです
赦すからこそ赦されるのです
死ぬからこそ  永遠の命に目覚めるのです

 このマザー・テレサの言葉は、龍谷大平安で言う「EQ(こころの知性)」が、いかに大切かということを教えてくれています。私たちが、貪り欲すること、他人に対して直ぐに怒りの心を持つこと、直ぐに愚痴を言うことなど、そのどれもが受けとめる側のこころの有り様(よう)で、いかに、自分自身で自分の心をコントロールするかということです。受けとめる側のこころの持ち方ひとつですよ、ということでありましょう。仏教で言うところの「報恩感謝」ということになりましょうか。すべてのご恩に報い、感謝の心、合掌の心をもって接する、そういう「こころのあり方」を、しっかりと身につけて、人間力を高めて欲しいと思います。煩悩つまり欲望の塊である私たち凡夫には、たいへん難しいことではありましょうが、この人間力がしっかり身につけば、自ずと学力も向上し、素晴らしい人間に成長できます。それを、平安は君たちに期待しているのです。少しでもわかってくれたらありがたいです。これで今日の話を終わります。