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緊急事態宣言が解除されて - 黙食励行! 2021年06月22日(火)18時09分

6月20日(日)をもって京都府に発出されていた緊急事態宣言が解除され、まん延防止等重点措置に移行されました。
本校は、緊急事態宣言下の短縮授業を通常授業に戻すなど、段階的ではありますが、通常の学校生活へと教育活動の正常化を図っています。

6月22日(火)、当初の予定では高校生は「芸術鑑賞」の日ですが、講堂での演劇鑑賞は3蜜が回避できないということで、急遽「学年別球技大会」を開催し、時差登校などで感染予防に努めました。中学生は「校外学習」、8月下旬に研修旅行をひかえた3年生は、京都市内でのフィールドワークを実施しましたが、昼食時にはいったん学校に立ち戻って、それぞれの教室で一定方向を向いての”黙食”を行い、徹底した感染予防に努めたところです。

大人の世界でもこのご時世、飲酒会食は自粛が一般的ですが、昼食においても”個食”・”黙食”が求められます。大勢でワイワイガヤガヤ、話が弾んで食事を楽しむなんて風景はいつ戻ってくるのか、想像もつきません。

写真「黙食」について、本校宗教教育を総括される先生からご教示を受けました。少し長文ですが、次に記しますので、『仏教×黙食』をご理解ください。

「黙食」と言う言葉をよく耳にするようになりました。コロナウイルス感染症対策として、黙って食事をするという意味で使われています。仏教的には「もくじき」と読み、禅宗において、禅の世界では古くから使われ、行われているもので、意味は黙って食事をするということですが、その内容は少し違います。今の「黙食」は、コロナウイルス感染症が広がらないようにということで「黙って食事」をしていますが、禅宗の「黙食」には、「感謝」と「敬意」が込められています。
 禅の世界には、「三黙道場」というものがあり、これは、一切話をしてはいけない3つの場所を指しています。その3つとは、「風呂」「トイレ」「坐禅堂」です。人は、集中しているときに他人とべらべら話をするでしょうか。おそらく、精神を研ぎ澄まし、その前にあるものに対して集中すると思います。
 また、禅の世界では、物事を同時進行することを避けます。一つのものに一生懸命取り組むことが大切だという考え方です。友達と真剣な話をしているときに、その友達が携帯電話を触っていたらどのような気持ちになるでしょうか。お風呂もトイレも私たちの日常の営みの中で大切なものです。それを集中して行うというのは当たり前のことだと思います。さらに「坐禅堂」は、坐禅だけでなく、寝たり、食事をしたりする場所でもあります。もちろん、寝ている時や坐禅をしている時に話す人はいませんが、食事をしている時にも一切、話はしません。それは、目の前に並んだ食事に対し、最大の敬意をもって接するためです。
 さて、私たちが食事をいただく時「いただきます」と言います。文法上は「食べる」の謙譲語ですが、「いただく」には、「敬意を表して高くささげる。頭上におしいただく」という意味があります。「食べる」のは自分ですが、「いただく」のは誰かから授けられたからです。
 考えてみますと、日本では本来、過剰な食物摂取を好みませんでした。むしろ、食に求めたのは、作法であり、真心でした。尊いいのちをいただく敬いの心でした。また、たくさんの方々、調理をしていただいた方への感謝、さらに食を分かち合う仲間(家族や同級生、同僚など)への共感が込められていました。そこには肉類を慎み、過食を戒め、また食作法を重んじる伝統様式が生活の中に定着していたのです。仏教の精進料理はその原型を今もとどめる貴重なスタイルといえるでしょう。
 このように考えると食べ物に対する敬意や感謝の気持ちがわいてきます。「話しながら」食べるのではなく、一つひとつの食材に思いをはせて、集中して接すれば、食べ残すこともなくなるのではないでしょうか。
 今、私たちがあるのは、多くのいのちのおかげであり、また、さまざまな方たちのおかげでもあります。その感謝と敬意をしっかりともって、ぜひ、「黙食」を実践してください。そして、食事の前後にはその気持ちをことばや思いに表してください。

■ 食前のことば
 多くのいのちと、みなさまのおかげにより、このごちそうをめぐまれました。
(みんなで唱和)深くご恩を喜び、ありがたくいただきます。

■ 食後のことば
 尊いおめぐみをおいしくいただき、ますます御恩報謝につとめます。
(みんなで唱和)おかげでごちそうさまでした。