今月の聖語・言葉を紹介します。
今月の聖語 ・・・ 正門聖語板
今月の言葉 ・・・ 教室掲示
【今月の聖語】
人のわろきことはよくよくみゆるなり
わが身のわろきことはおぼえざるなり
蓮如上人
昔、「今まで、悪いことをしたことがない」と言う若者がいました。
ある老僧は彼に言いました。「バケツに一杯になるように小石を集めてこい」と。若者は、庭中から小石を集めてきました。さらに老僧は、「このバケツ一杯分と同じ重さの大きな石を一つもってこい」と言い、若者は庭の端から大きな石を運んできました。今度は、「ではその大きな石をもとの場所へ戻してこい」と老僧が言いました。若者はしぶしぶ石を元の場所へ返しました。続けて、老僧は命じます。「では、バケツの小石をそれぞれ元の場所へ戻して来い」と。さすがの若者も黙っていません。「小石のあった場所をいちいち覚えていません。無理です」。
すると、老僧が言いました。「お前の犯してきた罪も同じだ。大きな罪なら、忘れもしまい。だが、小石のように小さな罪は身に覚えがないものだ。小石でも集めると、大きな石と同じ重さになるように、お前が気付かずに犯してきた罪はとても重たいものである」と。
人の「わろきこと」には気付きますが、特に自分の小さな「わろきこと」にはなかなか気付きません。知らぬ内に犯してしまっている罪。その恐ろしさを教えてくれるお言葉。
※わろきこと・・・悪いこと ※みゆるなり・・・みえる ※おぼえざるなり・・・気付かない
【今月の言葉】
一切の有情は、みなもって世々生々の父母兄弟なり。 『歎異抄』
父と母で二人。父と母の両親で四人。そのまた両親で八人。こうして数えていくと十代前で千二十四人。二十代前では百万人を超え、さらに三十代前では十億人を超えます。さかのぼればきりがありませんが、この多くの祖先の内誰一人が欠けても、今の私は存在しません。改めて、自分は、多くのいのちのつながりの中にあることがわかります。
これだけ多くの祖先がいれば、今は他人でも、遠い昔は祖先同士が「父母兄弟」だったということも十分考えられます。むしろ、何の関係もない人を見つける方が難しいといえるでしょう。
今月の言葉は親鸞聖人のお言葉で、「いま生きるすべてのものは、過去からのいのちとつながりあって生きる父母兄弟のような存在です」という意味です。
普段、自分の都合によって、親しい人・親しくない人、敵・味方と区分けをしていますが、実は深いところでいのちのつながりがあり、関わり合っているのです。そんなまなざしを宗祖親鸞聖人は教えてくださっているように思われます。