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令和3年度 成道会 2021年12月07日(火)16時00分

本日は、本校において成道会をお勤めしました。成道会とは、仏教を開かれたお釈迦さまが悟りを開かれた日です。3限目が高3の部で、高3生が後期考査最終日を終えて講堂に集まりました。

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5月の宗祖降誕会から引き続いて、広島の中村啓誠先生よりご法話をいただきました。まず、式次第の冊子に載せていた『ダンマパダ』の御文を挙げられました。

「戦いで百万の敵に勝つよりも ひとりの自己に克つひとが まことの最上の勝利者よ」
『ダンマパダ』

続いて、キアヌ:リーブス主演の映画『リトルブッダ』より、お釈迦さまが悪魔に打ち克った(これを「降魔成道」という)場面を紹介されました。菩提樹の下で瞑想をしていると、お釈迦さまの前にたくさんの軍隊が現れ、一斉に火矢をお釈迦さま目掛けて放ったところ、お釈迦さまの頭の上で花となって舞いました。この軍隊はお釈迦さまの心の中にある怒りの心(正確には「瞋恚」という)であり、お釈迦さまを苦しめている悪魔というのは、そうした煩悩の心であり、まさに「敵は我の中にあり」ということです。その煩悩に打ち克った日が、12月8日なのです。

また、12月8日は「真珠湾攻撃の日」でもあります。日本軍の奇襲攻撃によって大勝利を納めましたが、中村先生は「その日は日本人が負けた日なのです。誰に負けたのかというと、自分の心(アメリカを滅ぼしたいという怒りの心)に負けたのです。アメリカもまた、原爆投下の日(8月6日)に煩悩によって負けたのだと思います」とおっしゃいました。

そして後半では、旧日本銀行広島支店長らが被災者のために業務を再開させ、焼けてしまって預金通帳や印鑑を持たない人たちに対して、求められた分の金額を提供したというお話がありました。その後、預金帳簿を確認したところ、銀行側が余分に出したお金はなく、それは被災者が誰一人「嘘をついて多額な金額を引き出そうとしなかった」ということでした。中村先生はその史実について、「アメリカは原爆で広島の街や人を焼いたかもしれないが、広島の人たちの心に宿っている仏の心までは焼くことができなかった。己の中の煩悩に振り回されないように、仏さまならどう生きていくのかを考えて行動するか。それが真の勝利者だと思う」と、法話を締めくくられました。

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続いて、4限は中学・高1・高2の部でした。高2は講堂、それ以外の学年は各クラスで視聴となりました。お釈迦さまが悟られた「諸行無常(すべてのものは移り変わり、滅びないものはこの世にはない)」についてお話されました。その際、「すべてのことには終わりがあるという考えは、人の気持ちを楽にする。ずっと物事が続いていくと、そのものの魅力は半減する」と述べられました。次に、アップルの創立者である故・スティーブ・ジョブズ氏を紹介されました。ジョブズ氏は17歳の時から、毎朝、鏡を見て「もしも人生最後の日だとしたら、君がやろうとしていることは、本当にやりたいことなのか」と、自分に問いかけていたそうです。「今日が人生最後の日だったら、いのちというのは短いから、だからこそ今私が何をしなければならないのかがはっきりしてくるのだと思います。ずっと生きているのだったら、人生の目的がわからなくなるんだろう」と、中村先生はジョブズ氏から教えられたそうです。今日の成道会は、あらためて「いのちの尊さ」を考える時間となりました。